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ており、これらの学部の卒業生が自治体職員となる場合が今後増大してくることが予想されよう。ただし、各大学ともに学部設置からまもなく、卒業生をだしていないところが大半であるので、これらについて実例をあげて説明するにはまだ時期尚早といわざるを得ない。さらに、1995年4月に開設された神奈川大学法学部自治行政学科のように、「地方の時代」の社会的要請に対応するために、新しい自治行政の担い手の養成を主眼とした学部も出現している。このような動きには、前述の政策科学関連学部とともに従来の枠組みとは異なった学部レベルでの政策課題の発見や政策形成能力を有した自治体職員養成が期待できよう。また、近年の高学歴化に伴い、大学院修了者が自治体に就職ケースも今後増大しよう。前述の埼玉大学ならびに筑波大学大学院はいわゆるHid−Careerの再教育機関としての役割が大きいが、慶応義塾大学大学院や中央大学・立命館大学に大学院が設置された場合には、その修了生が自治体に就職するケースが多く生じてくるものと考えられる。それを希望する学生には、アメリカの行政大学院にみられるような実際に自治体での実習を義務づける「インターン制度の導入」などの実務型のカリキュラムも検討してみる価値があろう。学部、大学院両レベルを通じて、これを受け入れる自治体側の対応(たとえば採用試験の多様化などの工夫)なども含めて、今後の動向を興味深く見守っていきたい。
後者の現職の自治体職員が高等教育機関に入学する場合には、高校卒業者を対象とした大学進学のケースと大学卒業者の職員を対象にした大学院進学のケースが考えられる。近年では、職員の大学院進学を研修制度の一貫として積極的に推進しようとする自治体が増えてきている。たとえば、東京都においては、「東京都職員大学院修士課程派遣研修要綱」に基づき、職員を国内の大学院修士課程に研修生として、ますます複雑・高度化する行政に対応できる専門的能力及び知識を付与し、その資質の向上を図り、もって都行政の推進に資することを目的とする研修制度を1977年から実施している。同要綱によれば、派遣研修生に応募可能な対象者は、(1)行政職給料表(一)3級在職2年以上の者又はこれに相当する職にある者(2)年齢満35歳以下の者(3)勤務成績の極めて優秀な者(4)将来とも引き続き職員として勤務する意思を有する者(5)修士課程で研究を行うに必要な基礎的知識及び語学力を有する者という要件をみたしているものとされている。研修生の選考は、各局から推薦された者のなかから、(1)大学院で研究を予定している課題及び都政への貢献に関する論文についての書面審査(2)面接試問(3)所属長からの派遣研修生推薦書の書面審査(4)過去の研究業績、語学力等についての評価などにより候補者を選び、大学院試験に合格した者を研修生として決定するしくみになっている。研修生は、

 

 

 

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